ハラールフード生産の一般的ガイドライン

 

この章では、ハラール食品生産の一般的なガイドライン(基準)について概説しています。このページと共に「ハラール認証取得のガイドブックと申請書」ページの「ハラール認証ガイドブック」も御覧ください。

 

(1)牛肉、鶏肉など肉類

肉類は食物の中でハラールが最も厳格に規制され要求されます。豚や血液、死んだ動物の肉、神(アッラー)以外の偶像神にささげられたもの、屠畜時に神の名が唱えられなかったものなどは全て認められません。ハラールでないものを列挙すると、①死肉、腐肉、死んだ動物肉 ②血液(冷凍したものを含む) ③豚、イノシシ、その副産物(動物のエキスなども全て) ④屠畜時に、血液をほぼ瞬間的に全部体から排出(イスラームの屠畜法)せずに殺された動物肉 ⑤ライオン、犬、オオカミ、虎などの牙のある動物肉 ⑥タカ、ワシ、フクロウなど鋭い爪のある鳥(猛禽類) ⑦カエルや蛇などの爬虫類や両生類、などです。

 

(2)魚と海産物

うろこを持った魚は、すべてのイスラーム宗派やグループに受け入れられていますが、グループによってはうろこのない魚は食べません。ムスリムの中でも海産物、特に軟体動物(イカやタコなど)や甲殻類(エビ、カニ、ロブスターなど)には更なる異論があり、水生動物食品に対するハラール要求と制限は、魚貝類や海産物そのものだけでなく、そのような原料から加工製造された風味料や原料成分にも適応されます。

 

(3)ミルクと卵

ハラームな動物として禁止されたもの以外の清浄な動物からとれたミルクと卵はハラールです。しばしば問題となるのは、乳製品のチーズ作りで使われる酵素の種類で、タンパク質からなる酵素はその由来によりハラールになる場合もハラームになる場合もあります。微生物やハラールに屠畜された牛を源とする酵素はハラールですが、豚由来の酵素はハラームです。チーズ以外の乳製品などでも、製造に使用される酵素の種類によって、製品はハラール、ハラーム、疑わしきもの(シュブハ)のどれかに分類され、同様に乳化剤やカビ防止剤のような食品添加物も、製品からハラームの疑いを払しょくするために検査あるいはチェックすることが求められます。(後出)

 

(4)植物や野菜を素材とする産品

植物由来の飲食物は、酩酊状態にさせるもの以外はハラールです。しかし、植物由来の原材料と動物由来の原材料が、工場内の同じ設備・ラインで製造・加工処理されるので、汚染の機会が増えているのが実情です。適切な洗浄処置がとられ、ハラール製品がハラーム製品と明確に分離されれば汚染は避けることができます。植物由来製品のハラール状態を維持するために、生産工程・ラインで使われる器具や用具、製造方法に、コンタミネーション(接触汚染)がないか注意深くモニタリングされる必要があります。

 

(5)食品添加成分など

ここでは一般的によく使用される食品添加物、すなわち、ゼラチン、グリセリン、乳化剤、酵素、アルコール、動物性脂肪と動物性たんぱく質、香辛料や調味料などについて注意深くチェックすることが求められます。

 

① ゼラチン

ダブー(イスラームの流儀)で屠畜された動物由来のゼラチンはハラールですが、ハラールの流儀によらないで屠畜されたものや禁止された動物由来のゼラチンはハラームかあるいは疑わしきものとなります。ハラール製品は、イスラームの流儀にのっとって屠畜された牛由来のもの、もしくは魚由来のゼラチンを使用します。

 

② グリセリン

ムスリムは、グリセリンが、イスラームの流儀に則って屠畜された動物由来のものなのか、その場で判別が困難なので、動物性のグリセリンを避けており、最近はパームオイルや植物油脂など植物素材を原料としたグリセリンがハラール製品として使われています。 

 

③ 乳化剤

乳化剤は一般的に使用される食品成分のひとつですが、ハラール由来のものとハラーム由来のものとが存在します。たとえば、油脂から得られる脂肪酸とグリセリンを反応させて製造されるグリセリンエステルは、ハラールなものとそうでない物とがあります。

植物由来のものとイスラームの規則にのっとって屠畜された動物由来のものはハラールです。

 

④ 酵素

酵素は多くの食品製造過程で使用されており、チーズやスターチ製造はその代表的なものです。数年前までは食品産業で使用される酵素は動物由来のものが主流でしたが、今日では微生物由来のものに代わってきています。チーズ、ホエイパウダー、乳糖、濃縮ホエイプロテインなどは、他のすべてのハラール要件を満たしている限りハラールであるが、動物由来のあるいは混合物由来の酵素を使った製品の場合は、豚由来の酵素は全てハラーム、豚由来の酵素を使っていなくても疑わしい(シュブハ)部類に分類され忌避されます。一部の国では、イスラームの流儀によって屠畜されたものでない動物由来の酵素が受け入れられてきましたが、次第に微生物由来酵素の使用が広がっているため、そのような酵素の使用は減りつつあります。乳清および乳清からの生成物はタンパク質の安い供給源ということもあって、牛乳由来の様々な成分があらゆるタイプの食品の製造に使用されていますが、製品がハラール認定されるには他の原材料物質と同様、牛乳由来の成分も、使用酵素を中心にハラールである必要があります。

 

⑤ アルコール

ムスリムはたとえ少量でもアルコール飲料を飲むことは禁止されています。ワインや酒類は料理のいかなる過程でも、また調味料・風味料としても用いるべきではありません。たとえ微量でもアルコール性飲料がハラール製品に混入すれば、それだけでその製品はハラームとなります。欧米や日本では、調理にワインや日本酒、みりんなどを使用するのはごく一般的なことですが、食品製造の工程管理者やシェフ(料理主任)はハラール製品の生産、調理の際、アルコール類の使用を避けるよう注意が必要です。

アルコールはすべての生体系にあまねく存在しているので、新鮮な果物でさえごく微量に含有しています。果物からある成分を抽出する過程でアルコールが成分中に凝縮されますが、それは自然に存在する不可避なものであるため、微量が含まれているとの理由で食物製品のハラールステータスが無効になるものではありません。さらに純粋なアルコールは食品産業においては、抽出、溶融、凝結、沈殿などの働きをするものとして広く使用されており、とくに溶剤として最良のものであり、多くの場合、ある工程を完結させるために使用される化学薬品であるので、イスラーム宗教学者もその重要性を認識し、産業での使用を認めています。アルコールを使って作られた成分部材や抽出された材料成分などでも、最終段階でアルコールが蒸発、消滅(蒸散)してしまう限り、その材料成分は受け入れられており、食物成分に含まれる0.5%以内のアルコールは不可避な残留成分、また技術上必要なアルコールとして一般的には認められています。しかし、ムスリム消費者にとってどこまで受け入れられるかは国や宗派により異なります。 

 

⑥ 動物脂肪とタンパク質

食肉と鶏肉製品は、日常的な食物として消費されるばかりでなく、さらにその先のプロセスまで加工処理されて、加工食品やその材料を構成する成分物質に生成され、直接肉を使わない非常に多くの食品の案出に利用されます。先進工業国では、動物のあらゆる部位が、多彩に工夫されて使われています。胴体部分の売り物にならない部分やその副産物は粉末にされて食品原料となり、スープやスナックなどの風味料として使用されており、動物脂肪は精製されて機能的食品材料と同様、動物性ショートニングや乳化剤になります。そのような食品成分物質は、その素となった動物がハラールであり、接触汚染や混合汚染(コンタミネーション)を防止する方策がとられている限りハラールです。

 

⑦ 香味料と調味料 

香味料や調味料はコショウのように一種類のスパイスからなるものと、コーラやパストラミの香料のように数種類の成分を含んだ複合したものがあり、調味料によっては様々な物質由来の100種以上の成分からなるものもあります。これらの成分は微生物や植物、ミネラル、石油、動物などを合成して作ることが可能です。ハラール製品をきちんと定式化して管理するには、製造者は、それがいかなる風味料や特許を取得した混合法や秘伝、秘策の調製品などであっても、それらがハラールでありハラールとして疑わしい物質を含んでいないことを確認しなければなりません。