インバウンド/日本の飲食店でのハラール認証

★ 日本で飲食店がハラールを厳密に担保することは非常に困難

有史以来、非イスラーム社会である日本において、街の飲食店やフードサービス店などが、ハラルを厳密に担保することは非常に困難です。瞬間的にハラルを実現できても、それを長期にわたり継続実施することは至難の業です。コストも労力もかかります。イスラームという日本人には馴染みのない宗教が求める宗教規範を、非イスラーム社会の日本国内で100%遵守することは、そもそも無理があります。そしてそれが我国のおかれた現実なのであれば、インバウンドムスリム客を相手に営業される飲食店などにおいては、遵守が大変困難で違反する危険も小さくないイスラーム法の規定=ハラール に必要以上にこだわり固執するよりも、ハラールの規定を遵守しながらも、この日本で継続実施可能な方法でハラールを着実に担保することが、より現実的、実際的かつ経済合理的であるといえます。Local Halal の概念や Muslim Friendly, Muslim Welcome, Assalam Menu などのアイデアが、我国のイスラーム社会の中から自然発生的に生まれ、それをマレーシア政府が限定的とはいえ是認・追認したのも、我国のハラールを取り巻く環境に鑑み、こういった異文化や異宗教の間に存在する違和感、忌避感情などのマイナスの感情を、共に地球に住む同じ人間として克服調和し、なおかつ相互理解の世界に導くためだといえます。

また、洋食や西洋料理はさておき和食については、ハラールのためとはいえ、先人が大切に守り育ててきた日本の食文化や伝統を安易に改変することはムスリム、日本人双方にとって良くないことです。禅料理などに源を持つ日本の伝統食である和食には、肉、酒を使わず野菜中心で、ムスリムにそのまま食べて頂けるメニューがたくさんあります。そのような料理をハラールの観点から再吟味・再評価し、ハラール料理としてムスリムに提供することも出来るでしょう。日本の食の伝統を変えてまでものハラール遵守は、国外であればまだしも、国内においては避けることが賢明でありましょう。一部の和食は そのままでも Muslim available であるのですから。ただそのことをムスリムの方々に分かりやすく説明し納得させてあげる工夫は大いに必要です。このことは、和食だけでなく和菓子など他の日本の伝統的な食物などにも当てはまることです。要するに和食や和菓子など日本の伝統的な食品には、手を加えなくてもそのままでハラール食品としてムスリムに食べていただけるものがたくさんあるということです。とはいえ和食の伝統に立脚する限り、ムスリム向けの創意工夫は大いに歓迎されるべきです。

★ ムスリムは多種多様、いろんな人がいる。

一方で、そのような飲食店や食事メニューをハラルであると判断して利用し注文するのはムスリムの方々です。一口にムスリムといっても昨今はいろんなムスリムがおられ、ハラルの規定を遵守しながらも、ハラルに対する考え方・対応の仕方には相当な個人差があります。イスラームが一大世界宗教となった今、これは必然的なことといえるでしょう。

イスラーム教徒として多様なインバウンドムスリムのお客様に、ただ画一的に、ステレオタイプ的にそのお店の料理がハラールであるとお店の側からワンウェイに主張することはあまり賢明なやり方とは言えません。それよりも、ムスリムの方々が、それぞれのハラル感・ハラル意識にもとずいて、ハラルであると自ら判断できるようにしてあげることが大切です。私たちの最大の目標は、ハラル認証の取得や誇示ではなく、お客様であるインバウンドムスリムの方々が、安心して利用し注文できる食事環境や食事メニューを誠実に提供し、満足し納得していただいて商売を続けることです。これに関しましては(インバウンド/ハラール)食事系店舗 4種に区分」御参照。

インバウンドムスリム相手の商売では、ハラル認証の取得・表示は、もちろん最も効果的なもののひとつでありますが、それとともに大切なことは、ムスリムの方たちが安心してハラルであると判断できる料理情報を、分かりやすく積極的に提供してあげることです。食事をするに際して、許容範囲の広いムスリム、狭いムスリム(日本人の目から見て)それぞれが、自らの判断にもとづいて適切に対処することが出来るように、判断材料情報 を積極的に提供してあげることこそが、ムスリムに対する「おもてなし」の一番大切なことであるといえます。一口にムスリムといっても色んなムスリムがおられる昨今、このことはお店にとっても営業上、大変重要です。

★ ムスリム客には飲食物の分かりやすく正確な情報が必要

飲食物の情報は、わかりやすく正確なものでなければなりません。ムスリム客に提供される飲食物のハラールに関する情報の正確さ、信頼性を確認し保証するのは、やはりこの分野で高度な知見と経験を有するハラール認証機関や団体の務めです。当会(NPO日本ハラール振興会)も、ハラール認証業務とともに、ムスリム客に提供される飲食情報が正確であり信頼できるものであることを、第3者機関として調査し確認し公表する業務も行っています。特に食事メニューの確認とその公表には力を注いでいます。メニューに掲載された料理の素材を確認する書類(食材確認書)(Note of Acknowledgement of Materials & Ingredients)も発行しています。また料理名だけでなく、その料理がどんな原材料を使って作られたものかを分かりやすく掲示する、ムスリム客用のメニュー(ブック)の制作も承っております。

1970年に宗教法人として当時の文部省に認証され登記されて以来45年、現在外国人ムスリムも多数在籍するイスラーム宗教団体と提携あるいは密接に連携して活動しているNPOハラル認証団体のハラール食材確認は、それだけムスリムの信任も厚いと言えます。

★ ムスリムの応接は  Assalam(アッサラーム) の心で

費用対効果の観点や、ハラールあるいはハラール認証の持つイスラーム教的側面に一抹の不安を感じ、真正面からハラールを標榜するのははばかられる商店様や企業様などは、ハラール認証というイスラームの宗教的行為に代えて、「ムスリムに配慮したおもてなし」や「Muslim available(ムスリムが食べても問題なしの意)」をやわらかく意味し伝達する「Assalam」や「Muslim Friendly」「Muslim Welcome」などの hearty welcome words を、認証団体の承認を得て表示することにより、そのお店の提供する料理メニューやサービスが、ムスリムに配慮されたものであることや、「Muslim available」であることをゆるやかに日本風に伝えることができます。もちろんそのためには、経営者をはじめ調理・運営業務に従事する人たちが、イスラームの是非は別としても、少なくともハラールの基本的概念とそれを規定するイスラームを、友好的、好意的に理解することが大前提です。

ムスリムのお客さんに提供する飲食情報の内容とフォーム(形式)に関して、当会の(認定)基準をクリアした企業・商店様には、それらの飲食情報が正確で虚偽のないことを、政府公認のNPO認証団体として確証するために、「Assalam Menu 認定証」や「Muslim Friendly 確認書」など、"Confirmation Note" を発行しています。

とくに、「Assalam(アッサラーム)」はイスラーム世界でもっともポピュラーな挨拶の言葉(こんにちは、ようこそ、いらっしゃいませ)です。この言葉には宗教的な趣も多少ありますが、むしろ相手の前途の幸福を祈り、祝い、祝福する気持が込められています。この言葉が表示されたメニューや商品は、一目でそれがムスリムにとって好ましいものとして、彼らは迎え入れてくれます。「Assalam」は、「Muslim Friendly」や「Muslim Welcome」などの和製英語にも増して、インバウンドムスリム客に「おもてなしの心」をより親しみを込めて、彼らの言語(アラビア語)で簡潔に伝えることが出来ますので、ムスリム接遇のいろんな場面で使っていただきたいと思います。

繰り返しになりますが、出来ればハラール認証をとりたいと思っているけれども、様々な事情でそれが出来ない企業様、商店様は、ハラールを十分理解されたうえで、「Assalam Menu」、「Assalam Washoku」、「Muslim Available」、「Muslim Welcome」、「Pork Free & Alcohol Free」、「No Pork & No Alcohol」、「No Meat, Fish only」「Vegetables Only」など、ハラールであることを間接的に表すムスリム向け販促サインやディスプレイを上手に利用することにより、この店のメニューはハラルであり、ムスリムが食事をエンジョイできることを広くPRできます。

要約すると、                                                           お店が「Muslim Available」であることをWebやインターネットあるいはサインやディスプレイを上手に使ってPRすること。                                                       お店で提供される料理の素材や調味料の成分など、ハラールにかかわる具体的情報を、メニューブックやお品書きなど紙媒体なども使って、ムスリムに分かりやすく提示してあげる。                  「食材確認」や「メニュー確認」などハラール認証団体の確認を活用する。               

これらによって、ムスリムのハラール判断を助けてあげることによって、注文や購買につなげるようにすることが大切です。インバウンドムスリムについては、ハラール認証取得も含めて、お店に最も適合したやり方でハラールビジネスを実現されることをお勧めします。

他方、製品のイスラーム圏への輸出やOEM などアウトバウンドビジネスには、それぞれの国や地域が要求するハラール認証の取得が必須の要件となります。 これについては、このホームページの本文で詳しく解説していますのでご覧ください。