インバウンド/ムスリムの受け入れ Q & A

 

京都でハラール認証業務を行っているイスラーム宗教法人、「京都ムスリム協会」が作成した問答集を転載しました。ムスリム客の受け入れに頭を悩ませておられる方々には、良い参考になると思います。

<飲食>

: 豚肉、お酒以外にも、禁止された食べ物はありますか?

: 豚肉、豚由来の食材がたくさんあります。ベーコン、ポークソーセージ、ポークハ   ム、ラードなど。またそれが意外なところに使われています。たとえば、コンビニで 売られている梅おにぎり、おせんべい等も、原料表示に「豚肉」と明示されているものがよくあります。

海産物は、すべてOKですが、一部の学派で甲殻類(エビ、カニ)が認められていません。

ただし、その判断は、料理を選ぶ際に本人がするのにまかせてかまいません。そのほかにも禁じられた食材がありますが、通常は、日本では食べないものが大半です(蛙など)。

 

Q  :  豚を取り扱ったことがあり、洗った調理器具での料理は可能か?

A  :  不可です。

 

:  イノシシやイノブタは「豚」として扱うのか?

A  :  はい。

 

Q  :  ブッフェスタイルで、豚肉を含むものやショートニングを使ったパンなども含まれていると問題か。併存させなければならない場合、どのような工夫をすればよいか。

A  :  豚肉、豚由来製品、ラードなどが使われている場合、ムスリムは食べられません。ラードを使ったパンも不可です。併存させる場合は、英語などの表示をする方が良いでしょう。ショートニングは、原料が多様なので、原料によっては問題ありません。

 

Q  :  保存は、一般の食品と同じ場所でも構わないか。

A  :  豚肉及び豚系製品とほかの食材は、同じ場所には置けません。

 

:  隣のテーブルで豚肉を食べたり、酒を飲む客がいる状況は避けるべきか。

:  一般メニューでそのような料理が提供されている場合は、あまり神経質になる必要はありません。ムスリムは、ほかの人たちのことは気にしません。

 

Q  :  日本酒、料理酒、ワインなどを使った料理は、アルコールが加熱で蒸発した場合はよいか。

A  :  イスラーム法学では両論ありますが、気にする人はたくさんいます。食べる本人がOKであれば提供は可です。ハラール認証はできません。

 

:  ポークソテーなどに使った皿を、ムスリム用の食事に使ってよいか?

A  :  だめです。ムスリムのお客様は、それを極端に嫌がる方がほとんどです。豚肉をお使いのお店では、食器を分け、食器の洗浄も別に行う必要があります。

 

Q  :  消毒用エタノールは使って差し支えないか。

:  OKです。

 

:  魚の粕漬けは?

A  :  不可です。奈良漬も不可です。

 

Q  :  もしムスリムが、知らずに豚・アルコールを含んだものを食べてしまっていた場合、伝えるべきか。

:  無用です。再び不手際が起こらないように心がければ、それで構いません。

 

<ハラール認証について>

:  「ハラール」という言葉を、お店で掲示してもいいか?(例:メニュー、webサイトなど)

:  ハラール認証が必要です。ハラールの認定は、ムスリム団体にしかできません。イスラームの宗教事項の一部であるため、非ムスリムがこの語を勝手に使うことはできません。

 

Q  :  ハラール認証をする団体がたくさんあるようだが、どこでもよいのか。

A  :  きちんとイスラーム法に立脚し、戒律にのっとった基準の団体であれば、大丈夫です。(ただ、現状ではどこがそうであるかは、簡単には言えません。)

 

Q  : 「ハラール」と「ハラル」はどう違うのか?

:  同じです。「ハラール」はアラビア語の用語ですので、イスラーム世界の標準とお考えください。マレー語(マレーシア語、インドネシア語)では、長音は重視しませんので、東南アジアでは「ハラル」と発音します。どちらでも意味は変わりません。

 

:  ハラール認証は、どこの国でも有効か。

:  ハラール認証には、日本国内向け(inbound)とイスラーム諸国への輸出品に対するもの(outbound)とがあります。国内向けは、出身国がどこであれ、日本にいるムスリム全体に適用される基準です。輸出品の認証は、相手国の政府機関が定める法律・法令に則っている必要があります。輸出向けの認証を専門とするイスラーム宗教法人もあります。

 

<宿泊設備のアメニティなど>

:  宿泊設備のアメニティ(せっけん、シャンプー、化粧水など)で、気を付ける点は?

:  動物性原料、アルコールなどが成分として含まれているものはダメです。コラーゲンなどでも、魚類由来など、海産物が原料のものは問題ありません。アメニティは準植物性のものを用意すると安心です。

 

:  大浴場などは抵抗あるか。

:  たいていあります。気にしない人も、時にはいます。

 

<礼拝>

Q  :  礼拝は何時、どのように行うのか。受入れ側として注意する点は?

:  日に5回のうち、夜明け前と夜は、ホテルの自室で行います。昼間の活動中は、正午過ぎ、午後の後半、日没後の3回です。

 

:  ホテルで、礼拝用の敷物や方位磁針を用意すべきか?

:  コンシェルジェに貸出用を用意しておけば親切だと思います。敷物やマッカの方角(キブラ)がわかるコンパスなどは、イスラーム雑貨ナスリーン(http://islam622.cart.fc2.com)で、on line 販売しています。

 

:  礼拝場所を求められたら?

:  個人は自室で礼拝しますが、会議などの際に集団で礼拝する場所を求められたら、床が絨毯(じゅうたん)の部屋をご提供できればベターかと思います。

礼拝前には、水を使った清めをします(顔、腕、足を水で清めます)。洗面台を使いますが、熱帯や乾燥地からおいでの方は、水しぶきが周りに散っても気にしませんので、他のお客さんに迷惑にならないよう配慮が必要かと思います。

 

<その他>

:  戒律やその守り方が、厳格か緩やかかは、国籍である程度目安がつくか。

:  つきません。法学派によって違いがありますが、誰がどの学派かはわかりません。また、イスラームでいう「厳格」とは、聖典の教えに厳密に沿っているかどうかのことで、外から見て、内容が容易かどうかには、関係ありません。

 

Q  :  観光名所として有名な寺院・神社などは勧めて差えないのか。

:  OKです。文化交流は良いことです。なお、それが好みでない人がいれば、行かないので心配はいらないと思います(一般観光客の方の個人的な選好性と同じです)。

 

:  写経体験や座禅体験は、紹介しない方が良いのか。

:  しない方がいいです。たいていの場合に、お坊様が講釈をするなど、宗教性が強くあります。

 

Q  :  着物着付けなど、着替えを伴う体験は問題ないか。

A  :  女性はOKです(着付けの方が、女性ばかりなので。異性の着付けを手伝うことはできません)。

 

Q  :  やってはいけない(失礼にあたる)ジェスチャーなどはあるか。

:  身体に触れない方が良いです。握手も、特に異性の場合はしない方が良いです。

男性同士でも、頭には触れない方が良いです(日本人は、意外に頭に触れることが多いので気を付ける必要があります)。

 

:  偶像崇拝が禁止だと聞くが、キャラクターグッズ(ハローキティ等)のお土産は問題ないか。

A  :  特に問題はありません。

 

<断食月について>

:  ラマダーン(断食月)の最中や前後の時期のムスリム観光客に対して、飲食の対応はどのようにすればよいのか。配慮すべき点は?

:  ラマダーン月の前には、特に何もありません。旅行関係の事業者様は、ラマダーンがいつ始まるか知っておいた方が良いと思います。新月の目視で決まりますので、前月末までわかりません。ラマダーン直後(翌月の初め)3日間は、断食明けの祭となります。日本でのラマダーン明けの祭りの礼拝に参加したい、という方がいるかもしれません。その地域の礼拝の場所をご案内することはいいことです(もしあればですが)。

 

Q  日本を旅行中でも、断食をしますか?

:  旅行者は、後の期日に延期することが認められていますが、旅行中でも断食する人もいます。接客上、断食するかどうかを、個々人に確認した方がいいと思います。たとえば、昼食を用意したのに食べない人がいると、無駄になるかもしれませんので。

 

Q  :  断食中の人がいるときに、他の人に飲食物を出してよいか?

:  はい。断食中の人に対して遠慮を感じることがあるかもしれませんが、まったく無用です。断食中の人は、他人が眼前で飲食しても、気にしません。